経済学

【経済学研究】株式投資のリターンと不動産投資のリターンの比較について

 

Jord, Knoll, Kuvshinov, Schularick, Taylor (2019) "The Rate of Return on Everything, 1870–2015" の研究成果の中から株式投資リターンと不動産投資リターンの比較を紹介します。

結論としては、過去のデータを整理すると、株式投資のリターンと不動産投資のリターンは大きな差異はないが、ボラティリティは不動産投資の方が小さいことが分かりました。

 

はじめに

株式投資と不動産投資のどちらが良いかよく議論されます。

節税や働き方など色々な視点からの議論があるのですが、今回は投資リターンの観点から見ていきます。

最近の経済学の研究で株式投資と不動産投資のリターンを比べている研究があったので紹介したいと思います。

紹介する研究論文は、

Jord, Knoll, Kuvshinov, Schularick, Taylor (2019) "The Rate of Return on Everything, 1870–2015"

です。

この論文はネット上にタダで転がっています。

 

論文の貢献点

今回参照する論文は

Jord, Knoll, Kuvshinov, Schularick, Taylor (2019) "The Rate of Return on Everything, 1870–2015"

です。

この論文のタイトルにもあるように、世界数か国の全ての投資対象商品の過去リターンを調査しています。

 

ご存じの方もいるでしょうが、シーゲル氏の著書に代表されるように、紙幣、金、短期国債、長期国債、株式の過去リターンは今までにも調べられています。

これらに加えて、この論文では国全体の資産の大きな部分を占める住宅資産の投資リターンも調べています。

(企業の所有不動産や農地は調査に含まれていません。)

この住宅資産には、賃貸物件だけでなく、個人所有物件も含めています。

 

賃貸物件の投資リターンは、インフレ率、住宅価格、家賃、維持コストが分かれば計算できます。

ところが、個人所有物件の場合には投資のトータルリターンの計算に必要な家賃のデータがありません。

この対応策として、類似の賃貸物件の家賃を個人所有物件の仮想的な家賃とみなして投資リターンを計算しています。

 

不動産投資にはメンテナンス費用が必要なので、これは考慮しています。

一方で、空室率や家賃滞納に関しては記載がなく、これらを考慮していないのか、メンテナンス費用に含まれているのか不明です。

ただし、人口増加している状況では空室率が大きな影響を及ぼすとも考えられませんが。

 

株式投資と不動産投資の比較データ

オーストラリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカの16か国の1870年~2015年のデータを使用しています。

※国によって多少の期間の違いはあります。

 

全期間 (1870年~2015年)

 

全期間 (1870年~2015年)の16か国の株式投資、不動産投資の実質リターン

株式 不動産 長期国債
平均リターン 6.88 7.06 2.53
標準偏差 21.79 9.93 10.69

 

全期間 (1870年~2015年)の16か国の株式投資、不動産投資の名目リターン

株式 不動産 長期国債
平均リターン 10.65 11.00 6.06
標準偏差 22.55 10.64 8.88

 

この結果から株式投資と不動産投資のリターンは非常に近いものであることがわかります。

 

一方で、標準偏差(ボラティリティ)に関しては、不動産投資の方が大幅に小さくなっています。

理論的に考えられているような、ボラティリティが大きいほうがリターンが大きいという結果にはなっていません。

 

更に、長期国債の結果も加えておきます。

これを見ると、長期国債のボラティリティは株式と比べると低いですが、不動産と比べて大差ないことが見れます。

安易に債券は安定的ということはできない結果になっています。

 

1950年~2015年

1870年からのデータには、第1次世界大戦、第2次世界大戦、ハイパーインフレーション期間が含まれています。

これらの期間はデータの信ぴょう性が劣るため、このような期間が含まれない1950年以降のデータを見てみます。

 

1950年~2015年の16か国の株式投資、不動産投資の実質リターン

株式 不動産
平均リターン 8.30 7.42
標準偏差 24.21 8.87

 

1950年~2015年の16か国の株式投資、不動産投資の名目リターン

株式 不動産
平均リターン 12.97 12.27
標準偏差 25.03 10.14

 

1950年~2015年の方が株式リターンが高くなっていますが、全体的な傾向は似通っています。

 

 

日本

各国別にも調べていますが、特に日本の場合の実質リターンを見てみます。

 

1870年~2015年 1950年~2015年 1980年~2015年
株式 6.00 6,21 5.62
不動産 6.54 6,74 3.58

 

1980年以降はリターンの低迷が目立ちます。

1980年以降の日本のリターンは、他の国と比べて顕著に低くなっています。

株式リターンと不動産リターンはどちらも全16か国の中で最低です。

日本を除いた国では、1980年以降の株式リターンの最低が8.60%で、不動産リターンの最低が5.14%です。

しかも、1980年以降のバブル期が始まる前から結果ですので、バブル期からのリターンはもっと低迷しているはずです。

 

日本の場合は、バブル絶頂期の1990年からのリターンと、バブルが終わった後からのリターンも知りたいですね。

2000年以降は不動産価格の低下も落ち着いたので、不動産投資のリターンがどうなったか興味がわきます。

 

 

所感

世界的、歴史的に俯瞰すれば、株式も不動産もリターンは似通っています。

どちらも富を形成するには良い資産でありました。

20歳からコツコツと投資していれば、普通の人でも資産を築いていけたことになります。

 

 

しかし、1980年以降の日本では株式からも不動産からも十分なリターンを得られていません。

日本株と日本不動産のどちらが良いかという問いには、世界的に比べると1980年以降はどちらもダメだったというのが答えです。

今後も似た傾向が続くと見込まれるので、日本株や日本不動産はプロ向けの資産だと考えています。

 

なので投資先の最有力候補となるべき自宅の購入も、投資リターンの観点から今の日本では難しい問題になっています。

もちろん、賃貸は大家の利益までも負担しないといけないので、賃貸が持ち家よりも良いわけでは必ずしもありません。

数十年前の日本ならば積極的に持ち家を購入するのが、レバレッジを効かせやすいこともあり、資産運用の観点からも合理的だったのですが。

 

個人的な意見ですが、持ち家を購入するならば、築20年~35年の中古一戸建てで安い物件を探し、低金利・長期の住宅ローンで購入し、リフォームしながら長く住むのが良いのではないかと思っています。

数百件の物件売却情報を見れば、良い物件が1年に2,3件ぐらいは出てくるのではないでしょうか。

築20年~35年なのは、新築プレミアムがなく、新耐震基準の物件を購入するためです。

一戸建てなのは、築古のマンションに長期間住む結果として、老朽化問題・取り壊し問題で物件売却が困難になるのを避けるためです。

低金利の住宅ローンなのは、日本での投資リターンは低いので、低コストでレバレッジをかけることでカバーします。

長期の住宅ローンなのは、毎期のキャッシュのアウトフローを少なくし、残りのキャッシュで全世界株式等に投資するためです。

 

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