立会外分売(たちあいがいぶんばい)は、証券取引所が閉じている時間帯に、大株主などが比較的多くの株式を、多くの(個人)投資家に、ある程度のディスカウントした価格で売却する事をいいます。
売出案件よりも規模が小さい事が多いです。
しかし、ジャスダック、マザーズ、東証2部の銘柄では、売出案件より規模が小さくなる数十万株程度でも、需給バランスを崩さずに、市場で短期間に株を売却する事は困難です。
これに対して、立会外分売をすることで、安定的に短期間で株を売却できる利点が大株主にはあります。
立会外分売のプロセスとしては、1週間~1か月ほど前に実施予定の発表がされます。
その時に分売実施予定期間が決められます。
立会外分売実施期間中に、立会外分売が実施され、前営業日の終値に基づいて分売価格が決定されます。
分売実施日の午前9時ごろ、株式の引き渡しが行われます。
立会外分売の戦略は幾つかあるのですが、このブログでは立会外分売の当日の始値で配分された株を売る戦略を基本としています。
ここでは、その基本戦略をまとめておきます。
目次
立会外分売の発表
立会外分売の実施は1週間~1か月前に発表されることが一般的です。
日本証券取引所の
適時開示情報閲覧サービス
で確認できます。
「株式の立会外分売に関するお知らせ」といった表題になります。
「立会外分売」などで検索すると見つけやすいです。
ここでは、日程、分売枚数、分売目的などを確認します。
立会外分売の発表時に確認すること
立会外分売が発表されたときに確認する事項について説明します。
日本証券取引所の適時開示情報閲覧サービスの他にも、証券会社や株式ポータルサイト(Yahoo!ファイナンスなど)で確認する事項もあります。
ブログで立会外分売案件を記事にするときには、これらの前提としています。
①日程
数日の幅で、立会外分売実施期間が設定されます。
殆どの場合は、実施期間の初日に実施されます。
立会外分売には資金が必要になりますので、他のイベント投資があれば、資金配分を考えます。
②分売枚数
立会外分売を実施するのは、ジャスダック、マザーズ、東証2部の銘柄が多く、流動性が低い銘柄が多いです。
このため、同じ銘柄でも分売枚数に応じて結果が変わってくることが普通です。
日々の出来高が数百株の銘柄で、数百枚の立会外分売を実施しても、その売り圧力で株価が急落することは少ないです。
しかし、日々の出来高が数百株の銘柄で、1万枚以上の立会外分売を実施すると、その売り圧力で株価が低迷することはありえます。
ちなみに、立会外分売は1,000枚~3,000枚で行われることが多いです。
③板・出来高
立会外分売で売り出された株が市場で消化できる流動性があるかも確認事項です。
この流動性は、板の厚さや出来高の多さが指標となります。
分売枚数に対して、板や出来高が十分にあるかは、経験的に判断します。
④立会外分売の目的
大株主が立会外分売を実施する目的は主に2つあります。
立会外分売実施の目的として、
「分布状況改善および流動性向上」
と書いてある事があります。
これは、立会外分売を実施するときの常套句で、実際は大株主が現金化を望んでいる事が推測されます。
もう1つは、東証1部への市場変更の条件を満たす目的の立会外分売です。
市場変更のための条件には、株主数や株式流動性があるため、立会外分売によって、これらを改善する目的があります。
(株主数を増やすために、立会外分売の他に株主優待を新設する場合もあります。)
特に、東証1部への昇格を目指した立会外分売の時には、将来的にTopix連動型ファンドなどからの資金流入が予想できます。
立会外分売発表後には、この予想に基づいた買い圧力が発生することがあります。
立会外分売までに、株価が急騰してしまうと、利益確定のため、立会外分売を機に売りに転換してしまう可能性もあります。
一方で、立会外分売当日までに株価が急騰していないならば、今後の買い圧力も予想されます。
⑤株価
株価を確認するのは、単元株価が低い場合と高い場合は注意が必要になるからです。
(ここでは、単元が100株の場合を想定し、現在では少なくなった単元が1000株の銘柄の解説は省きます)
単元株価が低い場合は、分売価格割れ、手数料負けになる可能性が高くなります。
例えば、100円の単元株価で3%の割引率の場合を考えます。
この時、割引額は3円分(100株で300円分)しかありません。
ちょっと株価が下がっただけで、手数料負けしてしまいます。
単元株価が高い場合は、株価が上下に振れるリスクが高くなります。
単元株価が高くなると、株価の刻み幅も大きくなっていきますので、株価の変動幅も大きくなります。
他にも、単元株価が高くなると、同じ枚数を買うにも、より多くの資金が必要になります。
このため、買い板が薄くなる傾向があり、それほど大きくない売り圧力で、株価が下がるときがあります。
⑥配当と株主優待権利日
立会外分売の終了から近いうちに、配当や株主優待権利日があると買い支え要因になります。
⑦株価の変動
日々の株価の変動幅が大きい銘柄はリスクが高くなります。
特に、1日の値動きが割引率以上になる事が多い銘柄の立会外分売は低リスクとは言い難くなります。
空売り
ここで述べている、立会外分売の始値売りという基本戦略とは少し外れる点もあるので、最後にしましたが、空売り可能かどうかは非常に重要です。
空売り可能であることは、戦略の幅が広がります。
端的な戦略としては、立会外分売の前営業日の終値で空売りをしたうえで、立会外分売に申し込みます。
立会外分売の配分があれば、現渡をして割引率分の儲けを得ることができます。
この戦略にも不確実性はあります。
- 立会外分売実施日の不確実性
- 配分の有無の不確実性
- 空売りするので逆日歩の不確実性
特に、立会外分売が期間初日に実施されない場合は損失が膨らむことがあります。
上記の戦略以外にも、分売枚数が多い場合は、需給のバランスが崩れやすくなります。
立会外分売の参加・不参加にかかわらず、需給バランスの崩れを狙った空売りが仕掛けられることがあります。
いずれの戦略にしも、立会外分売の始値売り戦略に対しては有利に働きます。
第一に、前営業日までの空売りは分売価格を低くするのに役立ちます。
加えて、前営業日のまでの空売りを、立会外分売の配分で現渡されれば、売り圧力の減少になり、当日の売り圧力を減少させます。
前日までの空売りが買戻しされれば、買い圧力の増加となります。
このブログでは、制度信用売り、カブドットコム証券の一般信用売り、SBI証券のHYPER空売りについて言及します。
他にも、松井証券、楽天証券、GMOクリック証券でも一般信用売りがあるので、機会があれば言及します。
立会外分売前日に確認すること
立会外分売の前営業日には、終値が確定し、それに基づいた分売価格が発表されます。
殆どは3%弱の割引率になっていますが、空売り可能銘柄の場合は2%強になることもあります。
ただし、前営業日終値には注意が必要で、引けでの売り気配と買い気配のどこで決まっているかによって、割引率の意味も変わってきます。
立会外分売が発表されてからの株価の動きも確認しておきます。
特に、東証一部昇格目的の場合と空売り可能銘柄の場合には、忘れずに確認を行います。
東証一部昇格目的の場合は、株価が急騰していないかを見ます。
空売り可能銘柄の場合は、どれだけ株価が下落しているか、どれくらい株不足になっているかを見ます。
申込締切が早い証券会社の場合は、この時点で決断して、申込を行います。
立会外分売当日の前営業日の16時半~18時ぐらいから申し込み開始となります。
立会外分売当日の申込までにすること
申込締切が遅い証券会社の場合は、立会外分売当日の8時半まで申し込みが出来ます。
板は朝8時から提示されますから、8時過ぎぐらいの気配を確認してから申込を行うことができます。
確認が終わったら、締切時間までに申込するかを決めます。
立会外分売の配分
立会外分売の配分は当日の朝9時までに行われることが殆どです。
始値売り戦略をとるならば、配分があった株に、そのまま売り注文を入れて、約定したら終了となります。
朝9時までに配分が確定しない場合もあります。
例えば、同じ日に複数銘柄の立会外分売が行われるときには、配分が遅れることがあります。
(補足)ネットから立会外分売に申込できる証券会社
①SBI証券
申込締切:8時20分
口座数が多く、当選確率は他の証券会社と比べて低めです。
HYPER空売りを含めた、一般信用売りが使えます。
⇒ SBI証券
②楽天証券
申込締切:8時20分
手数料設定をいちにち定額コースにすると、立会外分売日に売却すれば、手数料無料で取引ができます。
銘柄数は多くはありませんが、一般信用売りが使えます。
⇒ 楽天証券
③マネックス証券
申込締切:8時20分
⇒ マネックス証券
④松井証券
申込締切:8時30分
1日10万円以下の約定金額だと手数料になります。
銘柄数は少ないですが、一般信用売りが使えます。
⇒ 松井証券
⑤ライブスター証券
申込締切:8時20分
⇒ ライブスター証券
⑥野村証券
申込締切:2時00分
申込締切が早いので注意
⇒ 野村証券
⑦マルサントレード (丸三証券)
申込締切:8時00分
手数料が税込216円~と高めです。
⇒ マルサントレード